古典音律について

 

♦ その他調律法 ♦


12音純正律  
12音純正律は、クロマチック半音(黒鍵部分)をどの様に定めるかが論点になります。3和音を重視し主要音程の純正の音程比をもとに12音階を構成したものと、純正律(ハ長調/イ短調)を基に割り振られた全音階から、半音の音程比により黒鍵の割振位置を定めたと思われるものとが存在します。
前者の音律は、多くの純正音程を確保しているが、マールプルク、マッテゾン等の純正調律法では、3つの1SC分狭い5度と、+2SC-スキスマ広い5度が1つが発生してしまい非常に不快な3和音も存在します。
後者の音律は、隣り合わせの半音の音程比の差異を少なくして、半音階のばらつきを抑えているが、下記ガナッシ、マルコムのように、クロマチック(黒鍵)とダイアトニック(白鍵)間の主要音程(5度、4度、3度、6度)において純正音程でのつながりを無くしてしまうと、当然純正3和音は減ってしまいます。
 
 

 

*主要音程の純正音程比をもとにクラマチック半音を構成した調律法
 
 
 
 
 
 
 
 

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*半音の音程比をもとにクラマチック半音を構成したと思われる調律法
 
 
 
 
 

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ピタゴラス全音階と
中半音(Mean-Semitone)
 
ドイツの数学者 Henricus Grammateus (1495-1526?) は1518年という時代に、すでにピタゴラス音律の全音階から ”半音階を均等化する” という画期的な調律法を考案していた。
ピタゴラス音律の全音階を元にF-BとH-Fisに1/2PC分少ない5度を配置する事により、クロマチック半音をピタゴラス全音(大全音 9/8)の半分に統一して、半音階を均等化。これにより5度ウルフを改善し、半音階は10個の均等な半音程(中半音 √9/8)と、2個のダイアトニック半音(ピタゴラスリンマ 256/243)により構成される。まさに等分音律の先駆けの音律といえます。
この調律法は、多くの純正5度を持つ上、4つのピタゴラス長3度以外の8つの長3度が平均律長3度より純正度が高い。ピアタゴラスや平均律と比べ、比較的純正度の高い三和音を多く有する事になります。
 
 

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バッハ
"Das Wohltemperirte Clavier"
調律法
 
J.S.バッハが使用した調律法に関して諸説がありますが、近年「平均律クラヴィア(Das Wohltemperirte Clavier)第1巻」冒頭のタイトル上部にあるバッハ直筆の”渦巻き”に関して様々な見解がなされてきた。
その中で2005年に発表された、Carles Francis、 Bradley Lehman、Emile Jobin の各調律法は、渦巻きの種類と数、及び渦巻き両端の記号等から独自の見解で12音階を示したものと判断し、下記の様に解読している。

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*フランシス カンマートーン調律法 2005
Carles Francis は、渦巻きに内包している丸の数がうなりの数と仮定して、内包1重丸は1秒間に約1回、2重丸は1秒間に約2回とした事によりバッハがより簡単に短時間で調律を終える事ができたのだと説いている。(内包しない渦は純正)
 
 
 

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*フランシス コルネトーン調律法 2005
 
 
 

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*レーマン調律法 2005
Bradley Lehman は、渦巻きに内包している丸の数が分割したピタゴラスコンマの種類と仮定して、内包1重丸は-1/12PC、2重丸は倍の-1/6PCとし、"Clavier"の頭文字の装飾文字的な"C"の位置をCとして右のFが起点で、さらに右端の装飾的な螺旋"3"がFの横にあることから、チェックとしてF-A間のうなりが3beats/sec(1秒間に3回)になる様にとしている。(同じく内包しない渦は純正)
 
 
 

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*ジョバン調律法 2005
Emile Jobin は、右端の記号が"Cの長3度=純正"を示していると仮定、C-E間が純正になる様、内包2重丸をミーントーン5度とし、残り内包1重丸は均一に3等分したミーントーン5度より純正度の高い(少し広い)5度であると説いてます。ただ、大バッハはキルンベルガーのこだわったC-E純正論には否定的だったとの説もあり、その事を考えるとこの調律法は若干矛盾する点が存在します。
 
 
 

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*ジョバン調律法の5度シフト
 
 
 

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