平均律について

 

♦ 平均律について ♦

 





ほとんどの音楽が12音階によって曲をなしているこの世の中、「平均律」という言葉をよく耳にしする事でしょう。バッハの曲に「平均律クラヴィーア曲集」??なるモノがあるぐらいです。
では、平均律とは?? 音楽に携わる者としては知っておかなくてはならない知識の一つだと思いますので、ここでカンタンに説明してみようかと思います。







楽音と
うなり
 
主に音階・音程が認識でき、旋律・和音を奏でることのできる音を楽音といいます。楽音には色々な定義がありますが、まあ分かりやすく言えば「きれいな音」の事でしょうか?
(詳しくは音楽事典等で!?)
その「きれいな音」を奏でる為の条件の一つとして「倍音構成」があります。

A=440の音を例にとってみます。楽音に含まれる倍音は理論上その整数倍に位置します。(図1)
 
 
という形で倍音が同時に発音している訳です。各々の倍音の量と発音のタイミング、長さ等の組み合わせによって、多種多様な音色として表現されていくのです。

音がズレた時、この倍音(基音も含む)どうしの干渉によって「うなり」は生じます。
ほとんどの音が基音によって認識されるので、和音のうなりも基音どうしがうなってると思われがちですが、ユニゾン(同音)以外の音程(2音間の隔たり)では倍音どうし、もしくは高いほうの音の基音と、低いほうの音の倍音という様に、共有する倍音どうしが干渉してうなりが発生します。(図2) ユニゾンのズレで基音どおしのうなりが生じる他、もちろんそれ以外の倍音にもうなりは同時に生じます。
 
 
上記の図2はド→ミの長3度とド→ソの完全5度の共有倍音です。この倍音同士に唸りが生じない状態を「純正(純正和音)」といいます。
ここで一つ大切な事なんですが、「唸り」のない美しい3和音を奏でる音律が「平均律」だとは思ってませんか?それは大きな間違いなのです。(このことは後の[平均律の矛盾]で説明します)

音階と
周波数

音の高さを示すものとして、主に人が日常聴覚的に感じ取る音階(ドレミファソラシド)と、音波の周期を示す周波数(Hz)とがあります。では音階と周波数の関係はどの様になっているのでしょう?
例えばピアノの音域では・・・(図3)


図3
ご覧の様に音階が上がるにつれてオクターブの幅が倍に広がっていきます。(カッコ内の数字は周波数)

 

 

2オクターブ上の音の周波数では、その音の2倍の2倍(2の2乗)となり4倍の周波数となります。
逆に2オクターブ下の音の周波数では、その音の半分の半分(1/2の2乗)となり1/4の周波数となります。
要するに、オクターブの数だけ「2を掛ける」「2で割る」といった考え方になります。

この場合の"2"という値を「オクターブの周波数比率」(1:2)といいます。
(振動数比率、音程比ともいう)

この"2"という数字が平均律の基本となります。

 

*各オクターブAの周波数の計算方法は図4のようになります。
 
 

平均律の
しくみ
 
12平均律をごくカンタンに言えば「1オクターブを均一に12等分した音律」といえます。言葉ではカンタンですね。しかし極めて理論的ではあるのですが、加えて妥協された音律でもあるのです。

平均律の考え方は17〜18世紀バッハ全盛の時代にはあったようですが、その時代「ウェルテンペラメント」といわれてたものは、純正和音を元に構成された音律「純正律」、及び純正5度を積み重ねてできたピタゴラス音律等から試行錯誤を繰り返し、オルガン、チェンバロの様な固定音楽器で、あらゆる調性 (Key) に適応出来る様にと発展してきたもので、平均律の様に12等分された音律ではなかったのです。 それらを総称して「古典音律」と呼ばれてます。古典音律には、長3度を重視したもの、完全5度と長3度の三和音の響き具合(うなり具合)が多彩なものなど、多くの手法を取り入れた調律法が存在します。
*古典音律#1(ミーントーン)
*古典音律#2(ウェルテンペラメント)
ちなみに、バッハの平均律クラヴィーア曲集の「平均律」は全くの誤訳だと言える。当該楽曲の譜面冒頭に記されたバッハ直筆の「Das Wohltemperirte Clavier」とは本来「程良く調律された鍵盤楽器」と訳されるべきで、現在の12等分平均律を指すものではないのです。

 
*では、平均律についてですが・・・

まず、平均律の12等分した一つの半音の周波数(振動数)を求めるためには、前項で出てきたオクターブの周波数比率が関係します。

以下、基準をA=440で例にとって考えてみます。(計算しやすいので)

A=440の1オクターブ上のAは、440Hz×2(オクターブの周波数比率)=880Hz となります。
では、A=440から半音上はどの様に出すのでしょう?

↓↓↓

440Hzに半音上を求めるある数字12回掛ければ(12音階なので)1オクターブ上の880Hzになります。
と、いうことは1オクターブ上なので、"2"を掛けることと同じですね。
と、いうことは12回掛ければ"2"になる数字を掛ければ半音上が求められる訳です。
     ↓
半音上を求める時掛けるある数字とは2の12乗根(12√2)ということになります!

A=440Hzの半音上(A#)は、440×12√2 となります。(約466.164Hz)
この12√2 (=1.05946309...) が「平均律半音の周波数比率」(1:12√2)なのです。
 
 
各音の値をだすのに12平均律では、基準の音から「12√2」を何回掛けるか、何回割るかによって算出します。しかしこの「12√2」は無限小数なので、当然求める値は純正律とは違いオクターブ以外は割り切れない数となります。

平均律の
矛盾
 
12平均律はその名の通り均一に12等分することによって、調(Key)にとらわれる事なく全部の調で、曲を演奏可能にしました。が、しかし平均律には大きな弱点が実はあります。それは「和音」です。
平均律の和音は ユニゾン(同音)と各オクターブ間以外の和音は "必ず" うなりが発生することになるのです!
声楽や吹奏楽のアンサンブルなどで「うなり」のない美しい三和音を体験した事はないですか。その「ツボ」にはまった事のある方は音楽に一つの感動を覚えたのではないでしょうか。残念なことに平均律でそれは成し得なかったのです。

そこで最初の項で示した「図1,2」を参考にして「うなり」のない和音と平均律の和音について説明しようと思います。

 

まずは「完全5度」(三和音の、ドと上のソにあたる音程)ですが、基音をA=440として考えて見ましょう。
図1で示した様に各倍音の周波数は基音の周波数の倍数にあたります。そこで、A=440とその完全5度上のEの共有倍音の周波数を求めてみます。


共有倍音は図2で示した様に、「ド」にあたるAの第3倍音、「ソ」にあたるEの第2倍音なので...

↓↓↓

*純正の完全5度の共有倍音の周波数は

(基音A) 440Hz ×3 = 1320Hz
(純正5度上のE) 660Hz ×2 = 1320Hz  *純正Eは 440 × 3/2(純正完5の周波数比率)= 660

同一の周波数となり、うなりはなく純正となります。(図上)

*同じ様に平均律の完全5度の共有倍音の周波数を求めると

(基音A) 440Hz ×3 = 1320Hz
(平均律の5度上のE) 659.255Hz ×2 = 1318.510Hz  *平均律Eは 440 × (12√2)7 = 659.255...

その差が1.490Hzとなり、毎秒1.49回のうなりが生じる事となります。(図6下)

 

 


 

次に「長3度」(三和音の、ドと上のミにあたる音程)ですが、同じく基音をA=440として考えて見ましょう。A=440とその長3度上のC#の共有倍音の周波数を求めます。


*共有倍音は図2で示した様に、「ド」にあたるAの第5倍音、「ミ」にあたるC#の第4倍音なので...

↓↓↓

*純正の長3度の共有倍音の周波数は

(基音A) 440Hz ×5 = 2200Hz
(純正長3度上のC#) 550Hz ×4 = 2200Hz  *純正C#は 440 × 5/4(純正長3の周波数比率)= 550

同一の周波数となり、純正となります。(図7上)

*次に平均律の長3度の共有倍音の周波数を求めると

(基音A) 440Hz ×5 = 2200Hz
(平均律長3度上のC#) 554.365Hz ×4 = 2217.461Hz  *平均律C#は 440 × 3√2 = 554.365...

その差が17.461Hzとなり、毎秒17.46回のうなりが生じる事となります。(図7下)

 

 

 


以上のように平均律では完全5度、長3度にうなりが生じる為、ドミソの「3和音」がどうしても多少濁って聞こえてしまうのです。それ以外の音程、完全4度、短3度、長6度、短6度 等も同様に平均律ではうなりが生じてしまいます。
上記では共有倍音においての周波数のズレを示しましたが、もう少し解りやすく表す為に 各音程の幅を、平均律半音を"100"とした単位「セント」で表すことができます。
 
 音程 平均律(セント) 純正和音(セント) その差(セント)
 完全5度 700 701.955 純正より1.955 狭い
 完全4度 500 498.045 純正より1.955 広い
 長3度 400 386.314 純正より13.686 広い
 短3度 300 315.641 純正より15.641 狭い
 長6度 900 884.359 純正より15.641 広い
 短6度 800 813.686 純正より13.686 狭い
 完全8度(オクターブ) 1200 1200 同じ
 
この項では平均律の和声的見解について述べしましたが、平均律が良くないモノだという訳では決してありません。むしろ旋律的な考えからすれば、均等な間隔を持つ平均律は他の音律より最も優れたものなのかも知れません。

複雑な複合和音から成る現在の音楽にとっても、単純和声を追従した古典的音律よりむしろ平均律の方が向いているのかもしれませんね。


(に)

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